産学官連携の取り組み事例 ⑥
知財ライセンス
研究シーズ発信の取り組みと、
契約締結の実績
リサーチ&イノベーション・ブリッジセンター 産学連携・知的財産室
(令和5年度)
(令和5年度)
国立遺伝学研究所
〒190-0014 東京都立川市緑町10-3 https://www.nig ac.jp/
■技術移転への積極的な取り組み
国立遺伝学研究所 リサーチ&イノベーション・ブリッジセンター 産学連携・知的財産室では、技術移転可能な研究シーズを国内外へ広く発信するため、技術紹介のポスターやチラシを作成し、積極的に展示会やイベントに出展・参加しています。また、これらの機会を通じて国内外の企業とネットワークを構築し、研究成果の社会実装を推進しています。
当室では、研究所の研究成果から生じた特許権、著作物などの知的財産権に関するライセンス契約や、成果有体物の提供契約(MTA)、共同研究契約を取り扱っています。契約の際は、企業の事業目標や実施目的を詳しくヒアリングし、研究者の意向も十分に反映させた上で、双方の利益を最大化する実施条件や対価の提案を行っています。これにより、スムーズかつ双方合意しやすい契約締結を実現しています。 さらに、当室では契約締結後も企業との連携を重視し、成果の活用や社会実装がより円滑に進むようフォローアップを行っています。このような取り組みにより、研究成果が社会に貢献し、新たな価値を創出することを目指しています。
■令和5年度の実績
国特許ライセンス契約:18件(うちライセンス契約6件、ランニングロイヤリティ契約12件)
●有償MTA:10件
●共同研究:24件
■主なライセンス契約・共同研究契約
●AID2(標的タンパク質分解)技術:国内外製薬企業へのライセンス及び共同研究、国内外企業による試薬製品販売
●温泉藻類(イデユコゴメ):幅広い分野の国内外メーカー、商社との連携・共同研究
●ALS(筋萎縮性側索硬化症)研究:バイオテクノロジースタートアップ企業へのライセンス
●メタゲノム解析:製薬企業、自動車メーカー等と連携・共同研究、解析ソフトのライセンス
●Tol2(トランスポゾン)技術:国内外製薬企業へのライセンス及び共同研究
展示会やイベントに出展・参加
技術紹介のポスターやチラシ
物体の反射光と蛍光を分離して可視化観察を実現
(令和元年度)
国立情報学研究所
〒101-8430 東京都千代田区一ツ橋2-1-2 学術総合センター https://www.nii ac.jp/
■分光蛍光マイクロスコープ「EEM® View」(※)
分光画像とスペクトルデータの同時取得を実現する新技術を、本研究所と株式会社日立ハイテクサイエンスが共同で開発しました。
蛍光成分と反射成分の画像の分離表示を可能とする計算アルゴリズムを同社の分光蛍光光度計に組み込むことで、物体のスペクトルデータとCMOSカメラによる蛍光・反射画像を同時取得し、さらに取得した試料画像を25分割した際の、区画ごとの拡大表示や蛍光・反射スペクトルデータも取得することができます。
従来の分光蛍光光度計では、試料全体の平均的なスペクトルデータの取得に留まっていましたが、本技術により反射・蛍光スペクトルを可視化し、画像による蛍光発生部位の把握や特定箇所のスペクトルデータの取得が可能となり、より高精度な蛍光物質の測定を実現しました。本装置の蛍光分析への活用により、微細測定ニーズが高まるLEDやディスプレイなどの電子材料や工業材料分野をはじめ、食品検査分野やライフサイエンス、バイオテクノロジー分野など、幅広い分野での研究開発や品質管理に活用が期待されています。
新規分野(マイクロバイオーム、新規藻類等)における契約件数、収入増
(平成30年度)
国立遺伝学研究所
〒411-8540 静岡県三島市谷田1111 https://www.nig ac.jp/
♦事例の概要
LEA(※1)、VITCOMIC2(※2)等のマイクロバイオーム分野関連技術をはじめ、日本産新規藻類(※3)や魚体内での他家組織の継代維持方法(※4)等、他シーズについて従来契約実績が多かった製薬企業にとどまらない多分野にわたる企業との契約締結・交渉が大きく進展しました。
(※2) VITCOMIC2:高速かつ高精度に細菌群集の系統組成を推定するツール)等のマイクロバイオーム分野関連技術
(※3) 日本産新規藻類:高温酸性で増殖可、高濃度の抗酸化ビタミン、ビタミンKを含有する藻類
(※4) 魚体内での他家組織の継代維持方法:同種別個体の精原細胞を移植して精子を作製する生殖組織の製造方法
観測隊が採取した南極産酵母が産業利用へ
(平成29年度〜)
国立極地研究所
〒190-0014 東京都立川市緑町10-3 https://www.nipr.ac.jp/
研究成果の地域産業への技術移転と自治体の調達資金による製品化
(平成29年度)
国立情報学研究所
〒101-8430 東京都千代田区一ツ橋2-1-2 学術総合センター https://www.nii ac.jp/
■カメラによる顔検出を防ぎ、プライバシーを守る「PrivacyVisor(プライバシーバイザー)」(※1)
本研究所が開発した顔検出妨害技術と、「めがねのまち さばえ」を掲げる福井県鯖江市の高度な眼鏡製造技術が結びついて、スマートフォンのカメラなどへの意図せぬ写り込みによるプライバシー侵害を阻止する眼鏡型デバイス「プライバシーバイザー」が製品化されました。 これは光の反射で顔の特徴を崩すことにより顔として認識されないようにした技術を使い、眼鏡のように装着するだけで自らが意図しない撮影からプライバシーを守ることができるものです。
セカンドモデル(平成30 年2月発売)は機能性を保持したままデザイン性にも配慮しており、普段はサングラスとして、レンズを前方に少し跳ね上げればプライバシーバイザーとして利用することができます。 この事業は、鯖江市との間で連携協力の推進に関する協定を平成29年6月5日に締結し、製品化の資金は鯖江市が管理運営するクラウドファンディング事業「FAAVO(ファーボ)さばえ」で調達し、平成30年1月に製品化を達成しました。
平成30年3月に中小企業庁の「はばたく中小企業・小規模事業者300社2018」の「需要獲得・ものづくり分野」に選定されましたが、これは全300社のうち、鯖江市から唯一の選定でした。
本件は地方の商社および金型製造会社へのPrivacyVisor関連技術のライセンス(商標ライセンスを含む)であり、国立情報学研究所(NII)が発行する「NII要覧」の保有知財一覧に掲載しています。
NII要覧:
https://www.nii.ac.jp/about/upload/NII_catalogue2024_jp.pdf
「プライバシー保護眼鏡」が発明協会の令和元年度関東地方発明奨励賞を受賞:
https://www.nii.ac.jp/news/award/2019/1030.html
(※1)カメラなど による顔認識を不能にして着用者のプライバシーを守る眼鏡型装着具「プライバシーバイザー」:
https://www.nii.ac.jp/userimg/press_20150806.pdf
写真左 プライバシーバイザーファーストモデル(販売:株式会社ニッセイ)
写真右 プライバシーバイザーセカンドモデル
デザインは、丸いオーバル(左)と四角いスクエア(右)の2タイプ(基本設計・デザイン・開発:前澤金型)
遺伝学分野に適した契約形態の実施、ニーズヒアリング等により
契約収入増
(平成28年度〜)
国立遺伝学研究所
〒411-8540 静岡県三島市谷田1111 https://www.nig ac.jp/
♦事例の概要
国立遺伝学研究所では例年のように特許出願を行っており、技術移転可能なシーズについて技術紹介チラシを作成するなど、国内外の展示会などで広報活動を行っています。
出願においては企業と研究者のニーズをヒアリングし、双方の希望に合致した条件、対価、契約形式を提案、円滑な契約締結を行っています。
平成30年度の実績は、ライセンス契約9件、有償MTA契約9 件、受託研究契約2件、共同研究契約12件、学術指導契約2件でした。
特に、本研究所のシーズであるTol2システム(※1)とAIDシステム(※2)は、国内大手製薬企業とのライセンス契約に加え海外大手製薬企業との契約締結件数が増加しました。
(※2) AIDシステム:植物ホルモン「オーキシン」を用いたヒト細胞内の標的タンパク質の迅速かつ高効率なノックダウン技術