情報・システム研究機構の
産学連携への取り組み

産学官連携の取り組み事例 ④
共同研究

世界初の南極からの8K映像の
リアルタイム伝送 
(令和4年度)

国立極地研究所

〒190-0014 東京都立川市緑町10-3 https//www.nipr.ac.jp/

■株式会社KDDI総合研究所との共同研究

株式会社KDDI総合研究所と極地研は、令和元年度に開始した「南極地域観測隊の記録と情報発信のための新しい映像伝送技術の開発研究と画期的な広報映像の社会発信のための実証実験」の一環として、南極から日本への8K映像のリアルタイム伝送に成功しました。平成16年から行われていたインテルサット衛星通信での映像伝送はHDTVの品質にとどまり、南極の昭和基地と日本の病院を繋ぐ遠隔医療支援や教育目的等の映像配信の効果を高めるため、高精細な映像が望まれていました。今回の実証実験において、スマートフォンで撮影・圧縮した映像を、日本に設置した受信システムで受信・伸長することで、南極域からの8K映像のリアルタイム伝送が世界で初めて成功したことは、医療や教育等に用いるリアルタイム映像の品質向上に貢献します。また、昭和基地と日本を結ぶ比較的低速な通信回線(最大7Mbps)で8K映像のリアルタイム伝送を達成した知見に基づき、KDDI総合研究所は、今後、世界中での高品質映像のリアルタイム利用を可能とすることで、現場作業のDX化の加速や高度化など、社会インフラの保全や強靭性確保に貢献していきます。

8K試験画像(上)と昭和基地看板の拡大映像のHDTV画像と8K画像の比較映像(下)



詳細はこちらをご覧ください

南極の大自然を学べる学習ツール「南極eスクール」を
Web公開
(令和4年度)

国立極地研究所

〒190-0014 東京都立川市緑町10-3 https//www.nipr.ac.jp/

■株式会社ミサワホーム総合研究所との共同研究

ミサワホームグループのシンクタンクである株式会社ミサワホーム総合研究所と極地研は、令和3年1月に配信を開始したiPad専用学習アプリ「南極eスクール」のWeb版を開発し、公開しました。 両者は、より多くの子どもたちに極域科学をはじめとした自然科学に関する興味を持っていただくため、産学共同プロジェクトとして、子どもたちが南極の大自然を楽しく学べるiPad専用アプリ「南極eスクール」を開発し、配信してきたところです。この度、汎用性を高めるために、アプリの機能はそのままにWeb化して公開しました。これにより、iPadだけでなく、iPhoneやAndroidなどのスマートフォン、PCなどでも「南極eスクール」をお楽しみいただけます。
「南極eスクール」URL:https://nankyoku-e-school.com/
ミサワホーム総合研究所と極地研は、「南極eスクール」を通して子どもたちに遥か遠くの南極の世界を身近に感じてもらうことにより、地球環境への興味喚起や意識向上に貢献していきます。  

昭和基地の上空に広がるオーロラ(「南極eスクール」の360度パノラマ画像を平面に展開)


詳細はこちらをご覧ください

南極域でのローカル5G実証実験を世界に先駆けて開始
(令和3年度)

国立極地研究所

〒190-0014 東京都立川市緑町10-3 https//www.nipr.ac.jp/

■NECネッツエスアイ株式会社との共同研究

国立極地研究所とNECネッツエスアイ株式会社は、南極・昭和基地のスマート化を目指して、南極域では世界初となるローカル5Gを活用した移動無線通信システムの実証実験を開始しました。昭和基地では、2004年にインテルサット衛星通信設備が設置されて以降、観測データの常時送信やインターネット利用が可能となり、現在では基地主要部の屋内でWi-Fiも使えるようになっていますが、屋外はトランシーバーがほぼ唯一の通信手段です。今回の実証実験期間中は、半径2.5kmの範囲でのローカル5G通信が可能となります。これにより、映像中継や基地設備の遠隔監視を実施し、隊員の安全性向上の実現を目指します。本実証実験の成果は、観測機器の制御や新たな観測方法など様々な面で、世界に先駆けた南極観測の高度化につながることが期待されます。  

※NECネッツエスアイ株式会社のプレスリリース:
https://www.nesic.co.jp/news/2022/20220225.html

昭和基地の屋外でスマートフォンを操作しローカル5G通信を利用する観測隊員


詳細はこちらをご覧ください

極寒の南極観測施設に
炭素繊維強化プラスチック建材を利用する実証実験を開始
(令和3年度)

国立極地研究所

〒190-0014 東京都立川市緑町10-3 https//www.nipr.ac.jp/

■株式会社竹中工務店との共同研究

国立極地研究所と株式会社竹中工務店は、年平均気温がマイナス50℃を下回る南極内陸の極寒域に新設する観測施設の屋根架構に、従来の鉄骨に代えて炭素繊維強化プラスチック(以下「CFRP」という)を活用する共同研究を進めてきました。CFRPは、①軽量、②高強度、③伸び・縮み・変形しにくい、④錆びないなどの特徴を持ち、航空、宇宙、自動車産業での利用も進んでいます。令和4年度に観測施設を南極内陸に設置する計画では、CFRPを架構の一部に利用することで、南極内陸までの建材の輸送エネルギーを大幅に削減することや人員の限られた南極での組立の負担の軽減が期待されます。設置された観測施設は令和10年まで現地で経過観察が行われることが予定されています。今後、竹中工務店は、CFRPの建設利用に関した更なる検討を進めるとともに、一般建築に向けた適用も推進していきます。

詳細はこちらをご覧ください

屋根架構

設置予定の屋根架構。黒い部材にCFRPが使われている(令和3年に国内で実施された仮組の時の様子)。 

南極について学べる学習アプリを開発し無償公開
(令和2年度)

国立極地研究所

〒190-0014 東京都立川市緑町10-3 https://www.nipr.ac.jp/

■ミサワホーム株式会社との共同研究

極地研とミサワホーム株式会社(以下ミサワホーム)は、産学共同プロジェクトにより、南極をより身近に感じ、楽しみながら学べるiPad専用アプリ「南極eスクール」を制作。令和3年1月に配信を開始しました。 「南極の大自然を、病院や院内学級で過ごす子どもたちや、教育的支援の必要な特別支援学級などの子どもたちにも楽しく学んでほしい」そんな思いを込めて、平成26年にミサワホームが制作し、限定公開となっていたiPadアプリ「南極ウォークビュー」。より多くの方に南極の魅力を届けるために、極地研の監修による科学的知見を追加して大幅リニューアルし、「南極eスクール」として一般向けに無料公開しました。 「南極eスクール」は、iPadの大画面や機能を活用し、南極に関する話題を、地理・歴史・生活・生物・地学・宇宙の6分野に分けて紹介しています。それぞれの分野では、360度パノラマ画像とiPadに内蔵されるモーションセンサーが連動し、手にしたiPadの動きに合わせて画像が動き、まるでその場に居るような感覚で南極の景色を楽しむことができます。また、360度パノラマ画像に配置されたポイントをタップすることで、南極に生息する動物たち、太陽が沈まない白夜、隊員が生活する昭和基地内部の様子などに関するパネルがポップアップ。極地研の研究者が監修した解説とともに、それぞれの分野に関する貴重な映像、画像を見ることができます。 今後も、本アプリを活用して、南極観測・研究を通じて培った知見を広く配信し、子どもたちのほか多くの方々に、極域科学をはじめとした自然科学に関する興味喚起、地球環境への意識向上などに貢献していきます。

「南極eスクール」のインストールはApp Storeから(無料)。
https://apple.co/3acSPyG


詳細はこちらをご覧ください

品質管理ビッグデータに対するデータ解析手法を開発
(令和2年度)

統計数理研究所

〒190-0014 東京都立川市緑町10-3 https://www.ism.ac.jp/

■株式会社東芝との共同研究

統計数理研究所は株式会社東芝との間で品質管理ビッグデータの解析手法に関して共同研究を行いました。大量の欠損を含むデータからでも不具合の要因を特定するデータ解析手法HMLasso™や、工場の現場技術者の知見を反映・学習して不良原因解析を可能にするデータ解析手法Transfer Lassoを開発しました。これらはスパース・モデリングという統計的機械学習の技法を利用しています。

HMLasso™
https://www.ism.ac.jp/ura/press/ISM2019-08.html
Transfer Lasso
https://www.ism.ac.jp/ura/press/ISM2020-10.html

設置予定の屋根架構。黒い部材にCFRPが使われている

不良原因解析AIの概要。設置予定の屋根架構。黒い部材にCFRPが使われているに加えて、現場技術者の知見と過去の品質低下原因を用いて原因を解析し、分析作業を大幅に短縮する。

産学共同実証実験「南極移動基地ユニット」が
グッドデザイン賞等を受賞
(令和2年度)

国立極地研究所

〒190-0014 東京都立川市緑町10-3 https://www.nipr.ac.jp/

■JAXA、ミサワホーム株式会社、株式会社ミサワホーム総合研究所との共同研究

国立極地研究所は、JAXA、ミサワホーム株式会社、株式会社ミサワホーム総合研究所の4者共同で、「第61次南極地域観測隊公開利用研究」として南極・昭和基地で、極限環境下での持続可能な住宅システムの構築を目的とした実証実験を実施しました。 この「南極移動基地ユニット」が、公益財団法人日本デザイン振興会が運営している「2020年度グッドデザイン賞」と「グッドデザイン・ベスト100」を受賞しました。

【評価コメント】
(グッドデザイン賞ホームページ、「受賞対象一覧」にて公開)
南極では、十分な人数の建築専門家を送り込めないために現地の研究スタッフで建築の施工を行わなくてはならないこと、限られたエネルギー源を生かす必要があることといった課題を解決するために、プレハブ技術を生かした省施工・省エネの基地ユニットが活用されてきた。実はこの条件は月面基地など宇宙環境でも同様であるという気づきから、ミサワホームが国立極地研究所、JAXAと組んだ研究への活用が進められている。極地環境におけるプレハブ・住宅技術の活用と磨き上げが宇宙基地の建築に資するという発想と、着実な研究の積み重ねが評価された。  

南極移動基地ユニット完成後の記念撮影

南極移動基地ユニット完成後の記念撮影
撮影:JARE61 吉井聖人(2020年5月21日、南極・昭和基地にて

詳細はこちらをご覧ください

タイヤ振動データを用いた道路状態推定システムの研究
(令和2年度〜)

統計数理研究所

〒190-0014 東京都立川市緑町10-3 https://www.ism.ac.jp/

■株式会社ブリヂストンとの共同研究

統計数理研究所は株式会社ブリヂストンと共同で、タイヤに取り付けられたセンサーから得られたデータを使用して路面状態を推定するシステムについて研究を進めています。このシステムから得られる路面状態の情報をドライバーや車両制御に伝達することで、安全な走行を支援することを目指しています。このシステムは車載搭載の実用上、(1) タイヤデータから頑健、かつ高速・軽量な演算による特徴量抽出、(2) データの取捨選択、(3) タイヤの経時変化に対応するために、路面状態の分類器の継続的な更新が課題となります。この共同研究では、速度や路面凹凸の変化に頑健な特徴量抽出法、kernel herdingによるデータ選択法、半教師あり学習法について検討しました。路面状態としてドライとウェットの2種類のタイヤデータを用いた実験と、実際に実装することを想定した検討を行い、継続的な学習と更新により性能を維持でき、サスティナブルなシステム(図1)を構築できることを確認しました[1]。
[1] 川真田智, 松井知子, 西田三博, 真砂剛, "タイヤ振動データを用いた道路状態推定システムの運用,” 電子情報通信学会技術研究報告, Volume 120, 195, pp. 14 - 19.

タイヤに取り付けられたセンサーから得られたデータを使用して道路状態を推定するシステムの概要

図 1:タイヤに取り付けられたセンサーから得られたデータを使用して道路状態を推定するシステムの概要 

共同研究成果であるゲノム編集のためのソフトウェアを、
要素技術の一部を持つ会社が商用パッケージ化
ライフサイエンス統合データベースセンター(令和2年度)

データサイエンス共同利用基盤施設

〒190-8562 東京都立川市緑町10-3 https://ds.rois.ac.jp/

■ゲノム編集のためのガイドRNA設計ソフトウェア「CRISPRdirect®」を株式会社レトリバが商用化

当センターの内藤雄樹特任助教らが開発したCRISPRdirectは、CRISPR-Cas9システムによるゲノム編集に利用可能な特異性の高いガイドRNAを設計することのできるソフトウェアです。ウェブブラウザ上で利用できるツールとしてDBCLSより公開されており、商用・非商用を問わず無償で自由に利用することができます。しかしCRISPRdirectウェブ版は、ガイドRNAの設計やオフターゲット候補サイトの検索がDBCLSの保有するサーバ上で実行されるため、企業等の利用者が秘匿情報を含む遺伝子や塩基配列を入力することが情報管理の面で難しいという問題がありました。そこで、CRISPRdirectウェブ版と同様のガイドRNA設計やオフターゲット候補サイトの検索を企業等の保有するコンピュータ上で実行可能な「CRISPRdirectパッケージ版」が、株式会社レトリバより発売されました。
株式会社レトリバは、CRISPRdirectのなかでオフターゲット候補サイトの検索に利用されている塩基配列検索ソフトウェアGGGenomeの内部の文字列検索エンジンを開発してきました。この文字列検索エンジンと、当センターがオープンソースとして公開するGGGenomeおよびCRISPRdirectのフロントエンドプログラムを利用し、コンテナ型仮想化技術であるDockerを用いてCRISPRdirectパッケージ版を開発することにより、商用化が実現されたものです。 なお、株式会社レトリバによるCRISPRdirectパッケージ版の発売後も、当センターが公開するCRISPRdirectウェブ版は商用・非商用を問わず無償で自由に利用できます。
CRISPRdirectロゴ

詳細はこちらをご覧ください

共同研究成果である塩基配列検索ソフトウェアを、
要素技術の一部を持つ会社が商用パッケージ化
ライフサイエンス統合データベースセンター(令和元年度)

データサイエンス共同利用基盤施設

〒190-8562 東京都立川市緑町10-3 https://ds.rois.ac.jp/

■高速塩基配列検索ソフトウェア「GGGenome®(ゲゲゲノム)」を株式会社レトリバが商用化

当センターの内藤雄樹特任助教らが開発したGGGenomeは、ゲノムや転写産物などの塩基配列を簡便かつ高速に検索することのできるソフトウェアです。ウェブブラウザ上で利用できるツールとして当センターより公開されており、商用・非商用を問わず無償で自由に利用することができます。しかしGGGenomeウェブ版は、情報管理上企業等の利用者が秘匿配列を検索することが難しいという問題がありました。そこで、GGGenomeウェブ版と同様の検索を企業等の保有するコンピュータ上で実行可能な「GGGenomeパッケージ版」が、株式会社レトリバより発売されました。
株式会社レトリバはこれまでGGGenomeの内部の文字列検索エンジンを開発しており、この文字列検索エンジンと、当センターがオープンソースとして公開するGGGenomeのフロントエンドプログラムを利用し、コンテナ型仮想化技術であるDockerを用いてGGGenomeパッケージ版を開発することにより、商用化が実現されたものです。
なお、株式会社レトリバによるGGGenomeパッケージ版の発売後も、当センターが公開するGGGenomeウェブ版は商用・非商用を問わず無償で自由に利用できます。

高速塩基配列検索ロゴ


詳細はこちらをご覧ください

民間とのパートナーシップ強化による南極観測の技術革新
(令和元年度〜)

国立極地研究所

〒190-0014 東京都立川市緑町10-3 https://www.nipr.ac.jp/

♦事例の概要

株式会社KDDI総研との間で共同研究契約「観測隊の記録と情報発信のための新しい映像伝送技術の開発研究と画期的な広報映像の社会発信」を締結(令和元年5月)し、映像伝送技術の開発と社会発信手法の開発に着手しました。
また、極限環境下での持続可能な住宅システムの構築を目的として、ミサワホーム株式会社等と共同研究契約「持続可能な新たな住宅システムの構築」を締結(令和元年7月)し、南極の極限環境での実証実験を開始しました。
株式会社竹中工務店とは、「新内璃空基地掘削場屋根架構の検討に関する共同研究」を締結(令和元年9月)して新ドームふじ基地での実証実験を計画しています。

■JAXA、極地研、ミサワホーム株式会社及び株式会社ミサワホーム総合研究所の連携 による「南極移動基地ユニット」の実証実験

JAXA、国立極地研究所、ミサワホーム株式会社、株式会社ミサワホーム総合研究所の4者は、極限環境下での持続可能な住宅システムの構築を目的とした実証実験を、南極・昭和基地で令和2年2月より実施しています。

詳細はこちらをご覧ください

昭和基地に組み立てられた南極移動基地ユニット

地銀コンソーシアム設立によるデータ蓄積と
世界初のリスクモデル構築
(平成29年度)

統計数理研究所

〒190-8562 東京都立川市緑町10-3 https://www.ism.ac.jp/

■「いつ起こるかもしれない金融危機」に備えるDBと損失率モデル

複数の地方銀行の高度信用リスク統合データベースコンソーシアムを設立し、それによって10年以上かけて蓄積したデータを基に世界で初めてのデータ統合LGDモデルを作成しました。リーマンショックのような金融危機が発生した場合に備えて金融システムの安定化や競争の公平性の維持にとって信用リスクの適正な評価手法基盤として本プロジェクトの成果は重要です。

詳細はこちらをご覧ください

デフォルト後の信用リスク

民間企業との共同研究と研究成果の実用化
(平成21年度)

統計数理研究所

〒190-8562 東京都立川市緑町10-3 https://www.ism.ac.jp/

■リーグスポーツをより面白くする勝敗数計算のアルゴリズムを確立

統計数理研究所は一般社団法人共同通信社との間でプロ野球のマジックナンバーの計算に関する共同研究を行いました。数理最適化と呼ばれる分野の研究であり、その成果として、CSクリンチナンバー(CSクリンチ)と名づけられた新しい指標が平成22年のシーズンから配信されています。公式戦がある日は、全試合終了後、各チームに対してそれぞれ2つ合計24個の最適化問題が解かれています。
この共同研究は、統計数理研究所の共同研究スタートアップを基にして始まった取り組みです。


詳細はこちらをご覧ください